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auf der Reise~旅の空~

white12211.exblog.jp

作家を目指す院生です。ドイツ留学時代の日記を中心に更新していましたが、院試(転科)→就活などのドタバタ挑戦ブログだったり、お出かけブログだったりと、割りと何でもアリで色々やっています。美術館めぐりも少々。

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ドイツ留学~時差ボケ~


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朝の五時にふっと目が覚めた。

早速荷物を取り出して、何もない空間に自分の物を置く。そうすると部屋が自分に馴染んだような気がして、居心地がよくなった。

その後、初めて海外から両親に電話をかけた。スカイプやラインの無料通話でしばらく話した後、おそるおそる寮の部屋を出た。

まずは近所でスーパーや生活用品を買える場所を探さなくてはいけない。

顔を洗おうにも、洗顔やシャンプー・リンスがない。というのも、ヨーロッパの水道水は硬水で、日本の製品はうまく泡立たないと聞いていたので、持って来ていなかったのだ。

昨日の夜は乗り物酔いで、部屋に着くなり眠ってしまったので、夕方の機内食以降、なにも食べていなかった。

ふらふらと近所を歩いていると、妙なオブジェを見つけた。

森の中に建物がいくつかあり、そこにぽつんと、赤いオブジェだけが異様な存在感を発揮しているのだ。

異国情緒というより、ファンタジーな異世界に来たような気持ちになる。


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ずいぶん遠回りしてから、小さな敷地内にお店が並んでいるのを発見した。

パン屋、銀行、スーパーが向かい合って二つ、服屋に生活雑貨、アイスカフェ。

こじんまりとした空間に、生活に必要なものがほとんど全て、器用に集まっていた。

小さな空間で完結する生活と、それ以上の自然。

その自然を満喫する前に、私の時差ボケはピークに差し掛かっていた。

頭がぐわんぐわん揺れている。気持ちが悪いし、空腹なのに食欲がわかない。

店員さんのドイツ語にびくびくしながら、パン屋でパンと珈琲を頼んだ。

ここに来るまでに、何人か人とすれ違って、じろじろと見られた。

普段なら気にしなくても、異国での第一日目だ。

初めて、人の視線が怖いと思った。

自分でもおかしなほど、神経過敏状態になっているのがわかる。

もしかして、行きの飛行機で、盛大に咳をし続けていた前の席の人に、変な病気でもうつされたのか――。

味もほとんどわからないまま、部屋に帰って、ネットで症状を検索してみた。

時差「ボケ」なんて緊張感のない名称だから、こんなにひどいわけがない。

と思ったのだけれど、やっぱり時差ボケだった。

不思議なことに、原因がわかると、少しほっとする。

それでも、人の視線は怖いままだった。

語学学校は来週から。

この一週間は慣れるため、と市内散策を予定していたのだが、そもそも私はフライブルクについて何も知らなかった。

地下鉄の乗り方は覚えていたのに、フライブルクには路面電車しか走っていなかった。

日本人の知り合いも、ドイツ人の知り合いもいない。

大学の教授に頼めば、フライブルク大学の先生を紹介してもらえたけれど、ドイツに来てまで人間関係に縛られるのも、頼るのも嫌だった。

全てをゼロから、自分の手で。

そういう信条があった。

だから、後悔したわけではない。

ただ、ヨーロッパ人のなかでアジア人ただ一人、という状況を初めて実感したのだ。

このままじゃいけない、とまだ二日目なのに、私は焦りを感じていた。

その夜、キッチンで青年がこちらに背を向けて、なにやら料理をしていた。

謎の冷凍チャーハンを解凍しに、共同キッチンに入った私は、思い切って声をかけてみた。

ウクライナ人のコンスタンティンさん。

自己紹介と語学学校の話をして、会話はスムーズに終わった。

躊躇したら、突っ込め。

新たな極論的人生観を身に付け、ようやく自分の調子を取り戻せたのだった。


~日記からの抜粋~
達成:近所のスーパーで買い物ができるようになった。





by white12211122 | 2014-09-27 23:20 | ドイツ留学の思い出

by みっこ