ドイツ留学~語学学校と日常~
語学学校に通い始めて数日が経つと、ここでの「日常」が定着してくる。
だいたい、私とフランス人のアリスが授業の五分から十分前に来て、その後にスイス人青年のジル、イタリア人紳士のヴィンチェンツォとノルウェー人のスーラが少し遅れてやってくる。残りの三人は、遅刻したりしなかったり。
朝に買ったパンの写真を撮って、アリスとほとんど通じない会話をする。
いつもつまらなそうな顔をしているスイス人青年は、授業中に質問されても「Ich weiss nicht(わかりません)」とやる気のない返事ばかり。
他の人とも話そうとしないので、そのジルに、あえて笑顔で話しかけてみる。
そういう流れができ始めていた。
ある日、私の顔を見ると、こちらが口を開く前に「Hallo(ハロー)」とジルから挨拶をしてくれた。
おお、と妙に感激しつつ、こちらもいつも通り挨拶をする。
同い年くらいかと思っていたら、実は彼はまだ十六歳で、どうやら人見知りであるらしかった。
私の周りには、結構人見知りが多い。
そういう人たちは、初対面でこちらが愛想よく話しかけてもどこかよそよそしい。
嫌われてるんじゃないか、じゃあなんで嫌われているんだろう、とすごく気になるので、さらに話しかけるようになる。
人見知りだったんだと気づくころには、もう打ち解けていて、長年続く友達になっていたりする。
多少そっけなくても、交流しようという気持ちをなくさなければ、関係はちょっとずつ変わっていく。
どこだってそうだけれど、相手がよほど嫌なヤツじゃない限り、人間関係はいくらでも楽しくできるのだ。
そういう努力には、価値がある。
(ベッヒレという水路。ここに女性が足をすべらせて落ちると、フライブルク出身の男性と結婚する、というジンクスがある)
(大道芸人や音楽家など、街角アーティストたちがたくさんいる)