auf der Reise~旅の空~

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作家を目指す院生です。ドイツ留学時代の日記を中心に更新していましたが、院試(転科)→就活などのドタバタ挑戦ブログだったり、お出かけブログだったりと、割りと何でもアリで色々やっています。美術館めぐりも少々。テニスを辞めてジム通い始めました。就職決まったので次は修論です。

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ドイツ一週間一人旅⑤~昼のドレスデン~

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ドレスデンに着いたのは夕刻で、バイロイトで見た鈍色の曇り空は、ドレスデンではいくらか明るくなって、パールグレイくらいには薄まっていた。

バスから降りて、観光地とは真逆の長い一本道を歩いた。さすがに長時間のバス旅で疲れていて、一歩一歩が重たく感じられる。

ミュンヘンでは街中の安いビジネスホテルに泊まったが、今回の安宿は観光地から少し離れた、若いバックパッカーが多いフランクな宿だった。潔ではあったから、特に不満はなかった。

三十分ほどベッドで横になっていたが、窓から見える空が刻々と暗くなっていくのを見ると、時間が勿体なく思えてきた。

なにかに駆り立てられるようにして、それからすぐに街中に出た。少し雨が降りだしていたけれど、ドイツ人は小雨くらいなら傘をささない。私も元々雨に関しては神経質なほうではないので、折り畳み傘は鞄にしまったまま、濡れて歩いた。

ドレスデンは大まかに言って、エルベ川にかかる橋によって、観光名所の集まった旧市街地区(アルトシュタット)と新市街地区(インネレ・ノイシュタット)に分けられている。

中央駅からまっすぐに伸びたプラガー通りを歩いていると、馬車が通りかかった。道の先には、バロック建築の歴史ある宮殿や聖堂がその先端を覗かせて、来訪者を待ち構えているようだ。

一九四五年の大空襲で破壊された街、ドレスデン。特にその歴史的背景を意識していたわけではなかったが、建築を始めとして、街に漂う古都の雰囲気だとか、そこかしこに傷跡が見え隠れしているように思えた。どれだけ活気づいたとしても、〈街〉そのものが受けた傷を記憶し続けるのだろう。

留学に行く直前に見た、広島の原爆ドームで感じた〈廃墟の空気〉と同じものを、この街にも感じた。原爆ドームほど強烈には訴えかけてこないものの、街に染み付いた独特の空気は、意識下に〈傷〉の気配を残していく。

この日、アルトマルクト広場では春の祭りが開催されていた。

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すでに馴染み深くなった木造の小屋が、何列も並んでいる。ちらっと店先を覗いただけで、広場を後にする。そのまま歩いていくと、右手に街のシンボルであるフラウエン教会が現れる。ドームは修復されたはずなのに、意図してなのか、乳白色が古びて見えた。さらに先へと進んでいくと、「ヨーロッパのバルコニー」と呼ばれる、ブリュールのテラスに出る。雨がひどくなってきたので、ようやく折りたたみ傘をさした。

旧市街地と新市街地を分けるアウグストゥス橋を渡ると、こちらにも祭りの屋台が出ていた。こちらは小屋よりも、おしゃれなワゴン型の屋台やゲームなど、比較的新しいものが並んでいた。

目的地は、エーリヒ・ケストナー美術館。大学のゼミで児童文学を選んだため、少しは馴染みのある作家で、彼の『エーミールと探偵たち』が好きだった。ところが、木曜日は予約の団体客しか入れないことになっていたらしく、建物の写真を撮っただけで、肩透かしを食らった状態でしぶしぶ引き返した。

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夕暮れの、赤みがかった灰色の空は、次第に青みを増して夜へと近づいていた。

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新市街地から再び旧市街地に戻り、ドレスデン城の周辺を練り歩いた。ここでは美術館にも博物館にも入らず、城の内部にも入らなかった。他の国々、街々では「見られるだけのものを全部見てやろう」と意気込んでいた私も、こんな静かな古都では、街そのものを展示品のように見立てて、外観を味わいたいという気分になったのだ。

ドレスデン城の丸天上を見上げる。満足して次の場所に向かおうとしたが、ここでさらに雨が勢いを増してきた。そういえば、夕飯時だというのに、まだなにも食べていない。ドレスデンに着いた時に、ホットドッグを食べたきりだった。

とにかく、ひどく喉が渇いていた。雨を避けるため、適当なイタリアンレストランに入って、パスタを注文する。そこでふと、一人旅の旅行客をほとんど見かけなかったことに気づいた。家族連れや、友人同士が多い。

雨はやむどころか、ますます強くなっていく。窓の外をぼんやりと眺めながら、思い出したように日記を書き始めた。寂しいという感情は特になかった。一人旅ほど、自由を実感できるものはないかもしれない。

私の好きなポルノグラフィティのある曲に、「夢は一人でみるものだから、君に見せてあげられない」という歌詞があるのだが、まさにそれだ。私が旅先で見た風景、留学で感じたことは、きっといくら言葉を重ねても、本質的なことはなにも伝わらないような気がする。自由、情熱、焦燥感。プラスもマイナスも超えた、色んなものが集まってできた、「私の旅」。一人旅も半ばに差しかかったいま、あるのは「ずいぶん遠くまできたんだな」という、静かな満足だった。

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by white12211122 | 2015-07-11 08:00 | ドイツ留学の思い出 | Comments(0)