ドイツ留学~友達を作る~
語学学校四日目で、「友達になる努力をしないと」と思い立った。
親しくなるには顔を合わせる頻度や時間が要る、ということを失念していたのだけれど、確かに機会は自分から作るべきだ。
私の留学の目的の一つは、「異国の地で生活」して、「外国語でどれだけ人間関係を構築できるか」を試すこと。
「アウグスティーナ博物館に一緒に行かない?」
と、ノルウェーのスーラ、フランスのアリスに声をかけてみたら、「いいね、行こう!」と乗り気な返事がかえってきた。
アウグスティーナ博物館には、中世の美術品が集まっている。
その翌日、語学学校が終わった午後に、アウグスティーナ博物館を訪れた。
館内は白と水色を基調としており、博物館自体も作品の一つであるような、シンプルな美しさがあった。
アリスとはお互いのなまりが聞き取りにくい、スーラは語学が堪能で、すでに母国語のようにドイツ語を話す。
今日も話しているときに、スーラが上のクラスに上がろうと思う、と言っていたので、遊びに誘ったのはいいけれど、会話が続かなくて気まずい思いをするのではないか・・・・・・と身構えていた。
その点、博物館に誘ったのは当たりだった。
時々感想を言い合うくらいなら、私にもできる。
博物館を一緒に観て回ることで打ち解けた私たちは、博物館を出たあと、フライブルク大学近くの階段に座って、アイスを食べながら談笑できるまでになっていた。
「ヴィンチェンツォって女の子大好きだよね」
「私、この前カフェに誘われたよ」
「私は電気屋に一緒に行こうって言われた」
「私、一緒にカフェに行ってきたよ」
「ええー」
私とスーラが物言いたげな顔をすると、アリスは慌てて、「カフェに行っただけだから! だって何度も誘うから」と弁解した。
将来何になりたいか、という話もした。
スーラはエンジニア、アリスは心理セラピスト、私は国語の教師。
並んで、階段に座って、他愛のない話をする。
お互いのアイスをちょっと味見する。
そんな小さなことが、とても嬉しかった。