ドイツ留学 ~いきなり日帰り旅行、シグマリンゲン城2~
早朝6時、やはり隣人のモハメドが寝過ごした。
時間になっても部屋から出てこないし、物音もしない。
どうやらまだ眠っているようなので、私の顔は一度まで、二度は許さないとばかりに、扉に足刀蹴を二度、おまけに突きを一本入れると、モハメドが転がるようにして出てきた。
あの時の、ハトが散弾銃を喰らったような顔は、今でもはっきりと覚えている。
一緒にやってきた私とモハメドを見て、チロが
「ラブコメだと、隣人って恋愛に発展するよな!」
とからかってきたが、私が答えるよりも先に、
「彼女はいい友達だよ!」
モハメドが青ざめたように言った。
日本の女性好きで、私に恋人がいると知って残念そうにしていたのは、もはや過去のことである。
初対面のスペイン人青年コルゲとサムソンに、私と同じクラスのアリスとルームシェアをしている女の子イレーネ。
彼女とは先日、アリスの紹介もあって、三人でお寿司を食べに行ったところだった。
日本食が恋しいだろうと、アリスが気を利かせてくれたのだ。
ちなみにイタリア人同士はイタリア語、スペイン人同士はスペイン語、私とモハメドに話しかける時は、彼らは英語を用いた。
この時彼らはまだ私より一つ下の初級クラスで、英語のほうが話しやすいと言って、授業以外では英語を使っていた。
私は話す内容は理解できても、もはや英語をほとんど忘れていたので、返すことができない。
イタリアとスペインの人が日本人に英語で話しかけ、日本人がドイツ語で答えるという、変な構図が出来上がっていた。
片道三時間の列車移動は、あっという間に過ぎていった。
3に続く