~クリスマスマーケット② ローテンブルク~
一泊二日で、行き先はローテンブルク。
日本からのツアーは大抵ここに立ち寄るので、城壁をくぐるとあちこちに日本人の団体客の姿があって、私は久しぶりに他人の日本語の会話を聞いて、妙な安心感に包まれていた。
ローテンブルクと言えば世界的に有名なクリスマスグッズの専門店ケーテ・ウォルハルトの本店がある。
そして、ドイツの玩具と言えばくるみ割り人形。
何十体もの質のいい値段も少し高めなくるみ割り人形が並んでいた。
店内の「クリスマスビレッジ」には2010年にドイツの優れた博物館100選に選ばれた「ドイツ・クリスマスミュージアム」があり、クリスマスの歴史を知ることができる。
中でも時代別クリスマスオーナメントとツリーの歴史が面白かった。
ツリーは1419年フライブルクのパン職人が聖霊救貧院にツリーを飾ったことから始まったという説明書きがあり、思いがけずフライブルクの名前を見つけて親近感を覚えた。
到着したのは昼過ぎだったが、市庁舎前ではすでにマーケットが始まっていた。
三つ目のコレクションを眺めながら、グリューワインで体を温めた。
味は色々あったが、とりあえずプレーンを買い、少し固めのクッキーのような球体を噛んだ。
特に味はしなかったが、素朴な味がいかにもドイツ的で、まあ試しておいてよかったかな、といった感想だった。
一番の目的であるクリスマスマーケットは着いて早々に叶ったので、残りは二つ。
一つは卒業論文の資料として、「中世犯罪博物館」に行くこと、二つ目は母へのお土産にくるみ割り人形を買うこと。
なぜか一番大きいくるみ割り人形を買ってきてほしい、とのことだったので、私はローテンブルク中の店を見て回った。
ツアー客があまり来なさそうなこじんまりとした店の中で、私はついにローテンブルクで一番大きいであろうくるみ割り人形を見つけた。
高さ50センチの大きな人形は、日本円で四千円もしなかった。
他の店ではこれより20センチほど小さい人形が一万五千円を越えていたので、破格の値段だ。
また戻ってくるのは疲れる。
私は迷わず購入を決めた。
「あら、日本から来たの? 一人?」
お店のおばさんはドイツ語で話しかけておきながら、私がドイツ語で答えるとなぜか驚き、喜んだ。
梱包してもらっている間、少し話し相手が欲しいと思っていたところだったので、卒論の話なんかも少しした。
日本人が一人でここに来るのも珍しい、そうだこれを持って行きなさい、とおばさんは手前にあったローテンブルクのイラスト入りのエコバックをむんずと掴み、私にくれた。
「えっ、お店の商品なのに」
「いいのいいの、ようこそローテンブルクへ!」
私はお礼を言って、ほくほくしながら店を出た。
そんなことがもう二回あり、巨大なくるみ割り人形を抱えたまま、意気揚々とローテンブルクの街を歩き回った。
日本人の経営するワイン専門店では両親にクリスマスプレゼントとしてアイスワインを購入し、祖母にはフェイラーのハンカチを、どちらも半額で買うことができた。
こうやって気分が良くなっている時には必ず次に真っ青になるようなミスが待っているのだが、やはりハプニングは待っていた。
②に続く