auf der Reise~旅の空~

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作家を目指す院生です。ドイツ留学時代の日記を中心に更新していましたが、院試(転科)→就活などのドタバタ挑戦ブログだったり、お出かけブログだったりと、割りと何でもアリで色々やっています。美術館めぐりも少々。

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ロンドン巡礼記⑧ロンドン塔と教会

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隙間なく空を埋め尽くしている灰色の雲のせいで、昼なのか夕方なのか、時間の感覚が少し曖昧になっていた。この四日目の午後までにずいぶん色々と観光地を巡ってきたが、ここまで見たら最終日の明日も使って、ロンドンを全て見てやろうという気になった。行けないことはない。そう思うと、疲れた足に力が戻ってきた。

地下の駅を出ると、外壁と塔が見えた。石造りの外壁。だが、「ロンドン橋落ちた」という童謡が歌われ始めた頃は木造だった。

主要観光スポットの一つであるロンドン塔は、王室の華やかさとほの暗さを象徴する宮殿であり、監獄である。戴冠式のパレードが始まる場所でもあるが、裏側には罪人の通る「反逆者の門」もある。霊感のある人がここに来ると、気分が悪くなるという話を聞いたことがある。

ロンドン塔の入場料は18ポンド。普通の塔だと思っていたら、テーマパークのような広さだった。

二、三体ほど、兵士を型どった鉄の人形が立っていて、その先にいる敵を見据えるように武器を構えていた。もちろん、今はその視線の先を追っても、いるのは大量の観光客だけだが。

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コインに刻印を押してくれる機械があったので、記念に回してみた。
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終わって振り返ると、私の様子を見ていた小さな女の子が、お父さんにせがんで機械のハンドルを回しているところで、昔父に遊園地に連れていってもらった記憶がふっと浮かんだ。

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壁に映し出されたショートムービーでは、行方不明となった双子の王子、エドワード五世と弟王子ヨーク公リチャードの物語が「赤」を強調した、どこか不気味な映像によって再現されていた。

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一時間半ほど歩き回り、霊感のない私は特に何か感じたわけでもなく、疲れた足を引きずって帰路についた。

赤バスの二階席からぼんやりと窓の外を眺めていると、ふいに大きな教会が見えた。セント・ポール大聖堂だった。夜の闇に白く浮かび上がるドームに惹かれて、ロンドンの金融街シティ・オブ・ロンドンで途中下車した。

確か入場に14ポンドかかるんだったかな、と思っていると、張り紙が貼ってあった。終了四十分前のミサにはお金がかからないと言う。それじゃあここで休憩していこう、と椅子に座って教会の中を見渡す。見事な内装だった。クリストファー・レンによる、バロック様式の傑作。モザイク画など、他の教会とは少し雰囲気が異なる。後で知ったことだが、螺旋階段を登っていくとドームの頂上に出られるらしい。そこまでの回廊のことを、こう呼ぶのだと言う。「Whispering Gallery」、ささやきの回廊、と。

のんびりと夜の教会でくつろいでいると、ミサが始まって、聖歌隊のアカペラを聴くことができた。集まった参拝客の中にはカメラを構えている観光者もいたが、大半は地元民だったように思う。週末の夜にミサに訪れる人々は、普段はどんな生活を送っているのだろうと、ふと考えた。金融街の一角にある、信仰の場所。そのちぐはぐなイメージに疑問が浮かんだが、その疑問に答えてくれる相手も、疑問を共有する連れもいなかったので、静かにミサの進行を見守った。

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王立裁判所も通り過ぎたが、立聴したかったので、次の機会にまた訪れることにした。

ここでまた赤バスに乗ったのだが、また途中下車した。店先に絵葉書一枚10ペンス、十五枚で1ポンドの表示を見かけたのだ。留学してからというもの、日本に比べて安価な絵葉書に魅せられて、すっかりコレクターになっていた。また、母が絵葉書を欲しいというものだから、さらに拍車がかかっていた。私の悪い癖として、相手がもういらないと言うまで渡し続けてしまうのだ。

トルコ人の男性店員はろくに確認もせず、「はいはい、十五枚だから1ポンドね」と言った。それから、日本人かと聞かれたのでそうですと答えると、嬉しそうに「コンニチハ!」と挨拶をしてくれた。こちらも嬉しく思ったが、残念ながらトルコ語でなんというかわからなかったので、ありがとうと言って店を出た。

絵葉書を書くために、目にはいったマクドナルドに入った。ロンドンも人種のるつぼだと言われているが、ファーストフード店に入るとそれがよくわかる。今まで観光客の中で行動していたが、ここで生活臭のようなものを感じた。

ここで、Nにもらった折りたたみ傘を忘れてきてしまった。

バスでがさがさと鞄をあさったが、ない。そうだあそこに置いてきてしまったに違いない、と気づいたが、すでにバスはかなり離れてしまっていたし、もしかしたらなくなっているかもしれない。疲れきっていたし、厄落としということで諦めた。

すると、隣に座っていたおばあさんが「探し物は見つかった?」と陽気に声をかけてきた。

「いえ、失くしたみたいです」

「何を?」

一瞬、アンブレラ、の一言が出なかった。ドイツ語のレーゲンシュリムしか出てこない。

「えーと・・・・・・ア、ア――」

「アンブレラ?」

「そう、それ! でももう諦めました」

「あちゃー」

何気ない会話を交わして、どちらともなく笑いかけた。最後、先に降りるおばあさんが、良い旅行を、と言って去っていった。




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by white12211122 | 2015-03-07 12:33 | ドイツ留学の思い出 | Comments(0)