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auf der Reise~旅の空~

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作家を目指す院生です。ドイツ留学時代の日記を中心に更新していましたが、院試(転科)→就活などのドタバタ挑戦ブログだったり、お出かけブログだったりと、割りと何でもアリで色々やっています。美術館めぐりも少々。

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ドイツ留学~定期券内途中下車~

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主要都市を五つ程見て周ったところで、私はようやく、それが誰にでも出来る観光旅行だということに気がついた。せっかく住んでいるのだから、観光客が来そうにない場所を訪れるべきではないか。

私は以前訪れたブドウ畑の村を思い出した。住宅と教会しかない、小さな閑散とした村。あそこには、普段の生活圏では絶対に出会うことのない人々の生活感と固有の雰囲気が濃厚に漂っていた。

あの村の静けさは、絵画に似ているのかもしれない。小さな頃、絵の中に入ってみたいと空想したことがあったけれど、人気のない閑散とした村を訪れるのは、その空想に近いような気がする。

語学学校の帰り道、いつものように中央駅まで歩いていると、眼下に見慣れた赤い列車が停まっていた。ふらっとこれに乗ったら、定期券内にどのような村があるのだろう。

もう出発してしまわないだろうかとオロオロしながら、階段を下りる。行ってしまったら諦めようと思ったが、列車はまだ停まったままだった。心も決まらないうちに、列車に乗ってみた。

目的もなくこの赤い列車に乗るのは初めてだった。路面電車とはまた違った、鉄道から見る風景がゆっくりと後ろに流れていく。

心惹かれる風景に出会ったら下車しよう。十五分ほど窓の外を眺めていると、なかなか良さそうな教会を見つけた。

ここにしよう、と降りて、ほとんど人気のない村を歩いた。教会が一つ、役所が一つ、カフェが一つ。他には住宅以外に何もなかった。マーケットすらない。

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Norsingenという地名は聞いたことがなかった。帰ってからネットで調べても、この地についての情報は見つからなかった。別に観光がしたかったわけではないので構わないのだが、もし見過ごしていたら嫌なので、その辺を通りかかった子ども連れの女性に声をかけた。

予想通り、特に逸話がのこっているわけではなく、教会以外は何もないのだと言って、その女性は笑った。

あのワイン畑のある村ほどの雰囲気はなかったが、この小さな村もまた、記憶の片隅に残った。

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by white12211122 | 2015-03-23 03:02 | ドイツ留学の思い出

by みっこ