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auf der Reise~旅の空~

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作家を目指す院生です。ドイツ留学時代の日記を中心に更新していましたが、院試(転科)→就活などのドタバタ挑戦ブログだったり、お出かけブログだったりと、割りと何でもアリで色々やっています。美術館めぐりも少々。

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ドイツ留学~バーでダンスを~

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ヴァルドキルヒのファスナハトに参加した後で、場所はフライブルクに戻り、私たちは行きつけのバーに行った。

バーといっても、学生たちがダンスだなんだと騒ぐような場所ではなく、どちらかといえば、近所のおじさんやおばさんが集まる、隠れ家的な落ち着いたバーだった。素朴で温かみのある、いかにもドイツ的といったそのバーには、素敵なママさんがいた。その日はそのママさんに、ファスナハトのパーティーにお呼ばれしていたのだ。

店に着いた頃にはすでにパーティーが始まっていて、老紳士とマダムが音楽に合わせて、軽快なステップを踏んでいた。誰もが派手な衣装に身を包み、知り合いも初対面も関係なく、小さなバーで笑い合っている。私の赤ずきんの衣装が普段着に見えるほどだった。ほとんどが手作り衣装で、当然、私服だなんて野暮なものはどこにも見当たらない。

私の顔を見ると、ママが「いつものビールでしょ」とウィンクを一つ残して、カウンターに戻った。

いつものやつ、とは、私が必ず注文する「ラドラー」のことだ。南ドイツ特有のビールをリンゴジュースで割った裏メニュー的なもので、こういうとおしゃれに聞こえるが、苦味が苦手だからビールは飲めないの、という日本人女性の口によく合う、いわばお子さま用のビールだ。

ちなみにこの店以外でこのメニューを頼むと、「もともとレモネードで甘くなっているビールを、さらにリンゴジュースで割るの? ずいぶん甘党ねえ」と必ず笑われる。レッドジュースという、ビールベースにトマトジュースを加えたカクテルを、「そういえばビールになんかジュースを混ぜるやつがあったっけ、リンゴだったかな」と間違えたのが始まりだった(日本人女性と出会うたびにこのビールを勧めていたので、そのうちフライブルクのバーで、「日本人女性は妙な裏メニューを頼みたがる」という話が広まるかもしれない・・・・・・)。

皆楽しそうに踊っていたが、気恥かしさといったものをあまり感じない私でも、ダンスだけは恥ずかしくてできなかった。ビールで何人もの人と乾杯し、写真を撮って、さあ支払いをして帰ろうかという時間になった。

「支払いをお願いします」

ママを呼ぶと、

「あら、だめよ。私と一曲踊ってからじゃないと!」

彼女はにっこりと笑って、逃げ出そうとする私たちを捕まえた。踊れないの、と一応申告しておいたが、「問題なし」と言い切られてしまったので、ママと踊ることになった。

若者が踊るような激しいダンスではなかったので、ママのステップをそのまま真似するだけでよかった。私だってまだ二十二歳だったけれど、あいにくダンスの才能がないのは、高校の文化祭でよくわかっていた。

一曲踊って汗をかいたところで、カウンター席でこちらを見ていたオジサマに声をかけられた。

「それじゃあ、今度はおじさんと踊ろう」

なんとか要領がつかめたので、向かい合って好きなように踊った。もちろん社交ダンスだとか、高度なペアダンスなどではなく、曲に合わせて手足を動かすような簡単なものだったが、それだけでも楽しかった。

楽しそうじゃない、とその場に三人のマダムたちが入ってきて、お次は「恋のマカレナ」が流れた。これだけは知っていたので、マカレナ・ダンスを知らないというマダムたちに、今度は私が教えることになった。

学生街の小さなバーで、ファスナハトの夜が更けていく。その日は少しばかり長居して、異国の祭りを存分に楽しんだのだった。



by white12211122 | 2015-04-01 21:31 | ドイツ留学の思い出