ドイツ一週間一人旅⑩~ベルリン(4)イーストサイドギャラリー~
政治的対立の象徴であった壁が、芸術作品として生まれ変わり、多くの観光客を引き寄せている。カラフルな壁画は、真髄に、真っ向から戦争反対のメッセージを向けたかと思えば、皮肉っぽく、シュールに過去を見つめる眼差しを見せたりもする。
一.三キロの壁は、長かった。歩きながら、自分は一人でずいぶん遠くまで来たんだな、とここでも考えた。旅の間じゅう、何度も感じたことだ。
ドレスデンとはまた少し雰囲気が異なるが、歴史変動の舞台となった場所は、なぜこうも肌で〈過去〉を感じさせるのだろう。壮大な歴史を感じると同時に、日本にいた頃の自分と、帰国間近の自分がオーバーラップする。
自分をなにか大きなものと比較することというのは、日常生活のなかでそうそうああることではない。このとき、夢に向かって着実に歩を進めていると思っていたのに、一歩すら踏み出していなかったような気がし始めていた。
この先まだまだ、やるべきこと、見るべきものがたくさんある。留学が終わることなんて、小さな終わりにしかすぎない。
頭ではそうとわかっているのに、私は奇妙な焦燥感を覚えていた。まだまだ見るべきものがあるのに、もう終わってしまうのか、と。
ドイツ一週間一人旅は終盤に差し掛かり、日本への帰国も、気づけば一週間後に迫っていた。