2015年 07月 21日
ドイツ留学~フライブルク 最後の食事会~
一人旅から帰ってきた翌日の夕方、私が予約していたレストランに語学学校の友人たちと先生が二人、それに日本人の友人も数人加わって、全員で十五人ほど集まってくれた。
一番仲良くなった外国人と言えば、イタリア人青年のチロとその彼女のクリスティーナだ。彼らは私にイタリアで買った財布をプレゼントしてくれた。
友人たちからは一人旅はどうだった、と感想を聞かれたが、チロは「どうしてフライブルクで最後の一週間を過ごさなかったんだ。君ともっと一緒に遊んだり、晩御飯を食べに行ったりしたかったのに」と不思議そうに、少し憤慨したように言った。
そんな過ごし方も考えた。けれど、そんなふうに残りの日々が過ぎていくのを待つのは嫌だった。私の脳裏に浮かんだのは、寮のあの部屋で、夜に一人きりで感傷的になっている自分の姿だった。
もちろん、一週間の一人旅はそれよりもっと前から計画していたことだったが、彼らとより深く親しくなるのが怖くもあった。
これから先も、お互いが定期的に連絡を取り合う努力をしていけば、付き合いは続くだろう。けれど、例えば食事の後にみんなで街を歩き回ったあの夜のような、語学学校の教室で笑いあったあの日々のような親密さは、二度と戻って来ないような気がした。
それなら、これ以上親しくなるのは辛い。旅に出ていれば、少なくとも夜に余計なことを考えずにすむ。この感情は、誰にも言いたくなかった。日本に帰るのが寂しいだなんて、そんなことは誰にも言いたくなかったし、なんだか西洋かぶれのようで認めづらかったのだ。誰も、そんなことで責めるはずはないのだが。
翌日の夜は、日本人四人がいつものバーに集まって、最後の女子会を開いた。色んな話をしたと思う。私が帰国を前に恋人と喧嘩をしたこともあって(結局、帰国後の翌日には無事仲直りできたのだが)、他の三人の恋愛観の話が中心だった。それと、日本でまた集まって、フライブルクの会を開催しようという約束も。
恋愛も友人との約束も、フライブルクで過ごした日々も、この時はとても儚いもののように思えた。すくった手の隙間から瞬く間にこぼれ落ちていくような、砂粒みたいな記憶の数々。
その日の夜は、すぐには寝つけなかった。
by white12211122
| 2015-07-21 22:00
| ドイツ留学の思い出