モダン都市の文学史 (江戸東京たてもの園)

先週の土曜日、バイト終わりに美術館巡りをしてきました。今年の夏は気になる展覧会があちこちで開催されるので、暇を見つけては足を伸ばしていくつもりです。
その第一弾が、七月二十日まで江戸東京たてもの園で開催していた「モダン都市の文学史~描かれた浅草・銀座・新宿・武蔵野~」。ちょうど大学のゼミで国木田独歩の『武蔵野』を扱っているところなので、楽しみながら勉強できました。学生証を見せると無料なので、お得感も。
浅草は川端康成の『浅草紅団』から、銀座は永井荷風の『つゆのあとさき』新宿は龍膽寺雄の『新宿スケッチ』、武蔵野は横光利一の『春園』。
龍膽寺だけは初めて知りました。調べてみたところ、茨城出身の作家、サボテン研究家。サボテンとはまた面白い。反プロレタリア文学という立場で、新興芸術家倶楽部を結成。モダン都市文学といえば新興芸術家倶楽部、といった文句がパネルに書かれていたので、ようやく「ふーん、そうなのか」と納得。機会があれば作品も読んでみたいものです。
一番気に入ったのが永井荷風でした。当時の銀座の情景ーー街並みの細かい描写に、カフェ事情。荷風の日記『断腸亭日乗』は、風俗資料としても価値があります。展示には荷風の銀座地図というものがあり、カフェ・タイガーから日比谷公園まで、二十三ヶ所が示されていました。
武蔵野のパネルには、阿佐ヶ谷で暮らしていた横光利一が、『春の園』で近くの杉の森や畑の情景を描写したとありました。
なんとなく、他の三つの場所と比べて、武蔵野にはさほど力を入れなかったと見えます。資料が少なかったのであまり印象には残らなかったのですが、独歩の『武蔵野』以外の作品から武蔵野の地について学ぶ、いい機会となりました。
建物を出ると、まだ昼の一時でした。料理教室の時間までまだ余裕があったので、竹橋の東京国立近代美術館に行くことにしました。
続く。