auf der Reise~旅の空~

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作家を目指す院生です。ドイツ留学時代の日記を中心に更新していましたが、院試(転科)→就活などのドタバタ挑戦ブログだったり、お出かけブログだったりと、割りと何でもアリで色々やっています。美術館めぐりも少々。

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ドイツ留学日記:『夜はおしずかに』(音楽)


久しぶりに、ドイツ留学の思い出話を。


留学での印象的な出来事や場所について聞かれると、何から話していいかわからなくなる。

二十二歳で訪れた初めてのヨーロッパは見るもの全てが目新しくて、あれから二年も経ったのが信じられないほど、今でも細かなことを鮮明に覚えている。

その一方で、ドイツ留学を思い出すとき、必ず思い浮かべるフライブルクのマルティン門は南らしい陽の光のなかで輝いていて、どこか浮世離れしている。白昼夢のように、曖昧にぼやけている。思い出が詰まっているのに、あるいは詰まりすぎていて、戸惑うのかもしれない。

ただ、印象的な夜は、と聞かれたなら(そんな質問はされないだろうけれど)、寮の部屋で一人過ごしていた〈あの夜〉を、きっと一番に思い出す。

特別な夜ではなかった。留学も半ばを過ぎた、たぶん、二月の夜。私はノートパソコンでポルノグラフィティの「夜はお静かに」を聴いていた。

ホームシックには全くかからなかったけれど、「異国に一人でいる」ことは常に意識の片隅にあった。それはいつもなら一人で青空の下を歩いている時なんかに多かった。

その夜のことがなぜそんなに印象深かったのかはわからない。そろそろ留学先での一人暮らしに慣れて、七か国ほど旅した後だったから、心に余裕ができていたのかもしれない。異国に一人きりでいる夜を堪能したい気分で、ダウンロードしたことすら忘れていた曲が、たまたましんみりするような雰囲気のものだったから、何度も何度も繰り返し聴いた。繰り返し聴きながら、日本でのことを遠い異国の出来事のように思い返していた。

ただそれだけのことなのに、妙に印象に残っている。

角田光代さんの『幾千の夜、昨日の月』というエッセイを読んでからは、余計に「夜」を意識するようになった。

いくつもある夜のなかから、印象に残った夜を一つだけ。

そんな特別な夜が、これからも増えるのだろうか。





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by white12211122 | 2016-03-10 01:18 | ドイツ留学の思い出 | Comments(0)