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auf der Reise~旅の空~

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作家を目指す院生です。ドイツ留学時代の日記を中心に更新していましたが、院試(転科)→就活などのドタバタ挑戦ブログだったり、お出かけブログだったりと、割りと何でもアリで色々やっています。美術館めぐりも少々。

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ドレスデンが一番その魅力を発揮するのは、夜だと思う。レストランで休息したあと、ゼンパー・オペラハウスを写真に収めた。雨は再び小雨に弱まり、宵闇の空は不思議に明るい白群青色になった。そのなかで、欧州屈指のオペラ座が鮮やかな色彩を放っていた。

オペラハウスのすぐ近くには、バロック宮殿の傑作と言われるツヴィンガー宮殿がある。門をくぐり、広大な中庭に入ると、ぐるりと四方を囲む宮殿を飽きもせずに眺めた。

ドイツの街は素朴だけれど、領邦国家であっただけあって、どの街も独特の味を持っている。建築と空気、街並みと雰囲気。これだけ見ても、まだ新しい場所がある。「見たことのないもの」がこれだけあるのは幸せなことだと思う一方で、自分が狭い世界に生きていたことを、痛感したりもする。

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再びドレスデン城を通り過ぎ、広場に戻ってきた。「エルベのフィレンツェ」と称される水辺の夜景に、いつの間にか始まっていた、ジプシーのオルガン演奏。昼間とは全く違う顔を見せた夜のドレスデンには、古都の重層感はあるものの、戦争の傷跡といった負の雰囲気はなかった。

ミュンヘンからバイロイト、そしてドレスデンへ移動するなかで休憩したとはいっても、ほとんど一日中歩き通しで、気づけば足が鉛のように重たくなっていた。ドレスデンで一泊すると言っても、明日の朝はポーランドのボレスウァヴィエツに出かけて、夕方にはベルリンに出発する予定なのだ。

今日は、もうここまでが限界だろう。絵葉書もしっかり買ったことだし、最後にヴェッティン家の君主の姿を描いた、長さ百一メートルもある壁画「君主の行列」を眺めて、宿へと引き返したのだった。

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by white12211122 | 2015-07-11 20:00 | ドイツ留学の思い出
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ドレスデンに着いたのは夕刻で、バイロイトで見た鈍色の曇り空は、ドレスデンではいくらか明るくなって、パールグレイくらいには薄まっていた。

バスから降りて、観光地とは真逆の長い一本道を歩いた。さすがに長時間のバス旅で疲れていて、一歩一歩が重たく感じられる。

ミュンヘンでは街中の安いビジネスホテルに泊まったが、今回の安宿は観光地から少し離れた、若いバックパッカーが多いフランクな宿だった。潔ではあったから、特に不満はなかった。

三十分ほどベッドで横になっていたが、窓から見える空が刻々と暗くなっていくのを見ると、時間が勿体なく思えてきた。

なにかに駆り立てられるようにして、それからすぐに街中に出た。少し雨が降りだしていたけれど、ドイツ人は小雨くらいなら傘をささない。私も元々雨に関しては神経質なほうではないので、折り畳み傘は鞄にしまったまま、濡れて歩いた。

ドレスデンは大まかに言って、エルベ川にかかる橋によって、観光名所の集まった旧市街地区(アルトシュタット)と新市街地区(インネレ・ノイシュタット)に分けられている。

中央駅からまっすぐに伸びたプラガー通りを歩いていると、馬車が通りかかった。道の先には、バロック建築の歴史ある宮殿や聖堂がその先端を覗かせて、来訪者を待ち構えているようだ。

一九四五年の大空襲で破壊された街、ドレスデン。特にその歴史的背景を意識していたわけではなかったが、建築を始めとして、街に漂う古都の雰囲気だとか、そこかしこに傷跡が見え隠れしているように思えた。どれだけ活気づいたとしても、〈街〉そのものが受けた傷を記憶し続けるのだろう。

留学に行く直前に見た、広島の原爆ドームで感じた〈廃墟の空気〉と同じものを、この街にも感じた。原爆ドームほど強烈には訴えかけてこないものの、街に染み付いた独特の空気は、意識下に〈傷〉の気配を残していく。

この日、アルトマルクト広場では春の祭りが開催されていた。

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すでに馴染み深くなった木造の小屋が、何列も並んでいる。ちらっと店先を覗いただけで、広場を後にする。そのまま歩いていくと、右手に街のシンボルであるフラウエン教会が現れる。ドームは修復されたはずなのに、意図してなのか、乳白色が古びて見えた。さらに先へと進んでいくと、「ヨーロッパのバルコニー」と呼ばれる、ブリュールのテラスに出る。雨がひどくなってきたので、ようやく折りたたみ傘をさした。

旧市街地と新市街地を分けるアウグストゥス橋を渡ると、こちらにも祭りの屋台が出ていた。こちらは小屋よりも、おしゃれなワゴン型の屋台やゲームなど、比較的新しいものが並んでいた。

目的地は、エーリヒ・ケストナー美術館。大学のゼミで児童文学を選んだため、少しは馴染みのある作家で、彼の『エーミールと探偵たち』が好きだった。ところが、木曜日は予約の団体客しか入れないことになっていたらしく、建物の写真を撮っただけで、肩透かしを食らった状態でしぶしぶ引き返した。

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夕暮れの、赤みがかった灰色の空は、次第に青みを増して夜へと近づいていた。

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新市街地から再び旧市街地に戻り、ドレスデン城の周辺を練り歩いた。ここでは美術館にも博物館にも入らず、城の内部にも入らなかった。他の国々、街々では「見られるだけのものを全部見てやろう」と意気込んでいた私も、こんな静かな古都では、街そのものを展示品のように見立てて、外観を味わいたいという気分になったのだ。

ドレスデン城の丸天上を見上げる。満足して次の場所に向かおうとしたが、ここでさらに雨が勢いを増してきた。そういえば、夕飯時だというのに、まだなにも食べていない。ドレスデンに着いた時に、ホットドッグを食べたきりだった。

とにかく、ひどく喉が渇いていた。雨を避けるため、適当なイタリアンレストランに入って、パスタを注文する。そこでふと、一人旅の旅行客をほとんど見かけなかったことに気づいた。家族連れや、友人同士が多い。

雨はやむどころか、ますます強くなっていく。窓の外をぼんやりと眺めながら、思い出したように日記を書き始めた。寂しいという感情は特になかった。一人旅ほど、自由を実感できるものはないかもしれない。

私の好きなポルノグラフィティのある曲に、「夢は一人でみるものだから、君に見せてあげられない」という歌詞があるのだが、まさにそれだ。私が旅先で見た風景、留学で感じたことは、きっといくら言葉を重ねても、本質的なことはなにも伝わらないような気がする。自由、情熱、焦燥感。プラスもマイナスも超えた、色んなものが集まってできた、「私の旅」。一人旅も半ばに差しかかったいま、あるのは「ずいぶん遠くまできたんだな」という、静かな満足だった。

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by white12211122 | 2015-07-11 08:00 | ドイツ留学の思い出

先日初めてファミコンで遊びました。

ファミコンといえば、ゲームボーイよりもさらに前のゲーム機……幼稚園の時、友達のお兄さんが家でドンキーコングをやっているのを見たきりでした。

もちろん、リメイク版ではありません。持っているという人がいたので、わざわざ家にまで持ってきてもらって一緒に遊ばせてもらいました。

画面がゲームボーイのドット絵で、ファミコン~アドバンス世代にはすごく懐かしい雰囲気です。

今回わざわざファミコンを持参してもらってまでやりたかったのが、アマゾンで見つけた「宮沢賢治のゲーム」。

「そんなのあるのっ?」と驚きましたが、発売は1990年代初期、コアなファン向けのマイナーゲームのようで納得。製作者の賢治先生リスペクトの精神が詰まっていました。

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内容は、貝の火、カイロ団長、虔十公園林、土神と狐、グスコーブドリの伝記、オツベルと象、セロ弾きのゴーシュ、雪渡り、銀河鉄道の夜。

有名な詩人、宮沢賢治の住む「イーハトーヴォ」という街にふらりとやってきた「私」は、賢治の噂を聞いて興味を覚える。そこへ賢治から手紙がきて、失くしてしまった七冊の手帳を集めて欲しいと頼まれる。

一章が終わるごとに手帳をゲット……なのですが、ラインナップを見てもわかるように、結構暗い話が多いです。しかも、主人公は童話の再現を見ていることしか出来ないため、登場人物の死を見届けて、淡々と手帳を回収して去るという、死体処理班ばりの淡白さなので、賢治先生の意図と同じくらい、「私」が謎だったりします。

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宮沢賢治ファンならニヤリとする単語の一つ、プリオシン海岸。

かま猫など、他の童話作品の登場人物もちょこちょこ出てきますが、「月夜と電信柱」「かしわばやしの夜」も出して欲しかったですね。

ゲームとしては、ひたすら指示に従うだけなのと、イベント発生ポイントがわかりにくいので、意外に体力を消耗しました。ただ、最後の銀河鉄道の夜までいくと、今までの物語(プレイの苦労)が甦り、感慨深さも加わって、幻想的な終結の余韻を味わえました。

ついでにサウンドトラックが好評価だったので、こちらも購入。BGMもレトロ&ノスタルジックで素敵でした。

ところで、宮沢賢治というと、銀河鉄道のアニメーション映画の製作者である、漫画家ますむらひろしさんを思い出します。

この方が二十年以上前に描かれた「アタゴオル物語」全七巻、「アタゴオル玉手箱」全九巻が、ノスタルジックな雰囲気の素晴らしい世界観なので、この作品をDSでゲーム化されるのを期待していたりします。


by white12211122 | 2015-07-08 09:19
七夕、私の願いごと&七夕らしい一枚!
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東京タワーの七夕ライトアップに行って来ました。

七夕当日って、いつも「そういえば、七夕だったけど別に何かする日でもないし……」で終わってしまうのですが、久しぶりに七夕らしいイベントに参加して、季節を感じられた夜でした。

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ついでに大展望室にも登ってきました。雨が降っていたので、遠くの景色が霞んでよく見えなかったのですが、仄暗い雨の風景もそれなりに情緒があっていいものでした。

年に一度の再会の日、今夜、織姫と彦星は会えたのでしょうか。

七夕の日の雨は、日本では会えなかった二人が悲しみのために流した「催涙雨」と言われますが、韓国ではその日の晩に降る雨は嬉し涙、2日間夜に雨が続くと、別れを惜しむ涙だというそうです。韓国の天気はどうだったんでしょうね?

今日のメインは、七夕ライトアップ。青い光の天の川が幻想的でした。じっと見ていると目がちかちかしてきましたが、七夕らしい良い写真が撮れたんじゃないかな、と満足。

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短冊のコーナーには、たくさんの願い事が集まっていました。

あえて書きませんでしたがーー来年も、大事な人と一緒に過ごせますように。

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by white12211122 | 2015-07-07 22:25 | お出かけ

ミュンヘンからドレスデンに向かうとなると、バスでは七時間かかってしまう。そこで、私が休憩地点として選んだのはバイロイトだった。

ミュンヘンから約三時間。バス旅はちっとも飽きなかった。窓の外に広がる風景が、それほど魅力的だった。街と街の間には、黄色く色づいた野原が見渡す限り広がっていて、時折遠くのほうに小さな村が見えた。

本当に小さな村で、誰かの一日が、もっと言うなら生活がそこで完結しているだなんて、想像もつかない。もしかしたら休暇用のセカンドハウスが多いのかもしれないが、本当のところはわからない。

八ヶ月のどこかで、小さな村に住んでみたらどうなっただろう・・・・・・と考えてみたが、それは私が選びそうにない「もしも」だった。今はとにかく、一分一秒でも多くのものを見たかった。深めるのは、その後でいい。

同じ風景がずっと続いているだけなのに、そこには素朴な魅力があった。空も覆い隠してしまう、都会の無機質なコンクリートの建物群には感じられないものだ。開放感。その一言に尽きる。

変わらない景色をぼんやり眺めながら、色んなことを考えた。今までの自分のこと。変わったこと、変わらなかったこと。

イタリア人の友人チロからもらった曲、Rooneyの「When Did you Heart Go Missing?」をひたすら聴きながら、静かな充足感と旅愁が混ざりあったような、不思議な気分でいた。

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あれだけ天気が良かったのに、バイロイトに着く頃には曇天に変わっていた。バスの停留所から観光スポットに向かって歩いていく。曇天に加えて人気も少なかったため、ゴーストタウンのような印象を持った。といっても、私の「街への印象」は天気に左右されることが多いので、きっと晴天の時には天国のように見えたかもしれない。

最初に見たのは、何の変哲もない白い建物に、色とりどりの「何か」が張り付いている光景だった。縦長の窓よりも大きな、カラフルな人形が斜めに張り付いている。そこが何の建物なのかはわからなかったが、その後も巨大な恐竜など、よくわからないオブジェに遭遇した。

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バイロイトと言えば、辺境伯オペラハウスにリヒャルト・ワーグナー・フェストシュピール(祝祭歌劇場)。

オペラの授業でこの場所を知った時、音楽にさほど興味があるわけでもなく(小説に使えそうなモチーフをオペラに求めたことはあったが、結局上手くいかなかった)、わざわざここに来ることはないだろうなと思っていた。

見られるなら見たい。その程度だったから、バイロイトの滞在時間はたった二時間と決めていた。『深夜特急』と違い、一週間しかなかったため、バスは既に予約済みで、一週間の綿密なスケジュール表もあった。何があるかわからないため、バス停には二十分前に着いておきたい。実質、一時間半しかなかった。


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辺境伯オペラハウスに行くと、まさかの工事中だった。少しがっかりして、とりあえずは展示室でハリボテだけ眺めておいた。

まあ、そこまで期待していなかったから。気を取り直してリヒャルト・ワーグナー・フェストシュピール(祝祭歌劇場)に行くと、こちらも工事中だった。

綿密にスケジュールを練ったつもりだったが、バイロイトに関しては失敗だった。ガイドブックに工事のことが書かれていなかったから、すっかり失念していた。こういうことは、ネットで事前に調べておくべきだった。

自分のミスとは言え、観光名所のどちらかは残しておいてもいいじゃないか、と腹が立った。ガイドブックにはエルミタージュ城があったが、バスで二十分もかかる。この時点で、既に残り一時間を切っていた。

行きと帰りの時刻を調べるのも億劫だった。慌てて観るほど、城に興味があるわけでもない。ドイツに来る前は古城ガイドブックまで買って、ドイツの城を全て見てまわろうとまで意気込んでいたわりに、結局は友人に誘われて行ったシグマリンゲン城くらいしかきちんと見なかった。

観光は諦めて、奇跡的に開いていたカフェで時間を潰すことにした。カフェの名前はもう覚えていないが、店内には誰もいなかった。むしろカフェが開いていることに驚いたが、出されたハチミツケーキは文句なしに美味しかった。

そこで、私は駅で買ったバイロイトの絵葉書を三枚取り出した。バスの出発時刻まで、静かなカフェで絵葉書を書いて過ごした。

誰かとの関わりもなく、何を観るでもなく、どこでも出来ることをあえて知らない街でする不思議さと、灰色の空、ゴーストタウンのような静けさ――。これはこれで、特別な時間だったのかもしれない。

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by white12211122 | 2015-07-04 02:02 | ドイツ留学の思い出
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ミュンヘンの街を散策しながら、マリエン広場から徒歩で、絵画のみを集めた「ピナコテーク」にたどり着いた。

ここには世界最古の公共美術館「アルテ・ピナコテーク(旧絵画館。古典から十八世紀)」、ドイツ・ロマン派や印象派の作品を多数所有する「ノイエ・ピナコテーク(新絵画館。十八世紀から十九世紀)」、ヨーロッパ最大の近現代美術館「ピナコテーク・デア・モデルネ(現代美術館)」という三つの美術館が揃っている。

この時の私はもっぱら中世に関心があったから、アルテ・ピナコテークに決めた。閉館時間の関係で一時間程しかいなかったが、私の好きな中世の民衆画をたっぷりと堪能できた。デューラー、ルーベンス、ブリューゲルは、大学の西洋美術講義で扱っていた(といっても、教室を暗くして解説付きで絵を観るという形式だったため、授業自体はほとんど眠っていたが、配布資料は全てファイルに保管してある)。



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特に気に入ったのは、ピーテル・アールツェンの「市場の風景」と、ピーテル・ブリューゲル(父)の「怠け者の天国」。

ブリューゲルは素朴で優しい色使いに惹きつけられる。

ヨーロッパの美術館はどこも所蔵作品が膨大にあるため、早歩きでざっと見て、気に入った絵をじっくりと眺めるというスタイルをとっている。

フラッシュなしなら撮影可という美術館が多いので、写真に撮ったり、ショップで絵葉書を買うこともある。

ミュンヘンで一泊することになっていたが、早朝にミュンヘンから二時間ほどかけてバイロイトに向かい、その後また三時間かけてドレスデンに着く、というハードスケジュールが待っていたため、今回はこのアルテ・ピナコテークしか観られなかった。

ノイエとモデルネは、また次の機会に。

結局、ノイシュヴァンシュタイン城はミュンヘンからのアクセスが悪く、一人で観るのはもったいないような気がして行かなかった。

今度はミュンヘンを起点に、オーストリアに寄ったり、私が行けなかったレーゲンスブルク、ポツダムに行って、ベルリンの空港から羽田空港に帰るというコースもいい。

その時まで、この残りの二館はお預けということにしておこう。




by white12211122 | 2015-07-03 20:00 | ドイツ留学の思い出
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ドイツ第三の都市と言われているミュンヘンだが、想像していたような大都市とは違い、コンパクトに観光名所がまとまった、散策向きの街だった。

レジデンツを観た後、ミュンヘン名物ドゥンケルビールと白ソーセージ(ヴァイスヴルスト)が食べたくて、さほどお腹は減っていなかったが、たまたま通りかかったレストラン「Spatenhaus(シュパーテンハウス)」に急いで入った。

白ソーセージというのは鮮度が命で、他のソーセージよりも痛みやすいため、こだわりを持つレストランでは午前中にしか出さないという。

私の持っていたガイドブックの写真はゆで汁にソーセージ一本だけが浮いているように見えたため(本当は二本あった)、一本だけ頼むのが流儀なのかと思いこんで注文したら妙な顔をされた。ちょっと恥ずかしい思い出として残ってしまったが、量的にはちょうどよかった。

すぐに、プレッツェル、白ソーセージ、ドゥンケルビールがテーブルに並んだ。

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先日、フライブルク大学に短期留学で来ていた関西の学生さんたちとの、日独交流パーティーにお呼ばれした時(私のタンデムの友人がフライブルク大学の事務さんだった関係で)、そこで知り合った女性が白ソーセージの食べ方を教えてくれたところだった。

まずはフォークで押さえて、ナイフで縦に切り込みをいれる。その後左右に皮をむき、中身を取り出して食べる。

ホームステイを経験せず、語学学校を拠点としたため、色んな国の人達と知り合えた反面、「ドイツ人を深く理解する」という感覚はついに得られなかったが、そのぶん小さなことで「気分を味わう」ことができる。

一度訪れた場所には行かない主義だけれど、ソーセージを本場式で食べたくらいで喜べるなら、またドイツに行きたいと思えるかもしれない。

ドイツについて私が理解し得たのは、砂漠のほんのひと握りの砂に等しい。派手さはない代わりに、ドイツには素朴で深淵な精神が横たわっている。まだまだ、ここで学ぶべきことがたくさんありそうだ。

荷物はホテルに預けてきたので、店員さんからボールペンを借りて、買ったばかりのミュンヘンの絵葉書を取り出した。この一週間の旅のおすそわけ、ということで、新しい街に着くたびに、両親、祖母、恋人宛に絵葉書を送ることにしていた。その記念すべき一枚目を、「ミュンヘン的なもの」を堪能しながら書くのが、とても贅沢なことのように思えた。

白ソーセージはニュルンベルクで食べた「最古のソーセージ」よりもずっと美味しかった。茹でたソーセージはあっさりしているし、苦味とクセのあるドゥンケルビールによく合う。

レストランを出てしばらく大通りを歩いていると、店先で黒いパグがくつろいでいた。足を後ろに投げ出して、うつぶせになって眠っている。妙に人間臭いなあと思ったが、気持ちはよくわかる。今日は本当に、日向ぼっこに最適な晴天だ。

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このパグは街中を自由気ままに散歩しているらしく、この後三回も別の場所ですれ違った。犬が自由に散歩できる街、ミュンヘン。もちろん他の街でもそういう光景を何度か目にしたけれど、ここまでくつろいでいるのは見たことがなかった。私もいい気分になって、次の目的地に向かった。

聖母教会、聖ミヒャエル教会を覗き、新市庁舎を全てアングルに収めるべく、マリエン広場に戻って、一番高いと言われている聖ペーター教会を訪れた。階段は二百九十四段。もちろん、エレベーターはない。

フライブルク大聖堂ほどではないが、高所恐怖症の私は壁に張り付いて震えた。隙間のある階段も怖かったが、狭い通路はその比ではなかった。一周回って街を一望なんて、とんでもなかった。本当に狭いので、すぐ目の前に金網がある。人とすれ違う時でも、絶対に壁から離れなかった。金網側に押されたら、泡を吹いて倒れてしまう。

それでも写真は撮りたい。震えながらカメラを構えていると、他の観光客が私の怯えっぷりを面白そうに笑って見ていた。誰かが英語で「頑張れ!」と応援し、すれ違う時は金網側を通ってくれた。私がなんとか新市庁舎を写真に収めると、「おめでとう」と別の誰かが微笑んでくれる。滑稽かもしれないが、一人でいると色んな人が声をかけてくれるので、嬉しい。

その次はヴィクトアリエン・マルクトという市場を訪れた。食にさほど興味のない私は、それまで市場にもあまり興味がなかったのだが、フライブルクで知り合った沖縄のNが大の市場好きで、新鮮な野菜を買ったり、買ってきた植物を嬉しそうに眺めるのを見ていたので、少しだけ感化された。

特に何も買わなかったけれど、ハチミツ専門店を見られたのは良かった。人が多かったので長居はしなかったが、食欲はわかなくても、新鮮な野菜がたくさん並んでいるのを見るのは楽しい。
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マルクトを去ると、観光名所の中でも少し穴場的な教会、アザム教会を見に行った。小さな教会だったが、今まで見たどの教会よりも美しく、圧巻だった。こんなに小さいのに、小宇宙のように豪奢な装飾、目で一つ一つ追うのが困難なほどの、たくさんのモチーフ。

椅子に座ってぼんやりしていると、ちょうどミサが始まった。この濃密な空間に、オルガン演奏が加わって、一瞬にしてファンタジーの世界へと思考が飛ばされる。

重たい扉を開いて再び外に出た後も、しばらくはぼんやりとしていた。美しいが仄暗い教会と、眩しい外の世界とのギャップ。

ぼんやりしながら、次はどこに行こう、と考えた。もうすぐ夕方になる。もう間に合わないかもしれないが――ミュンヘン最大の美術館、三つあるピナコテークのうち、せめて一つだけでも訪れたいと思った。

(ミュンヘン③アルテ・ピナコテークに続く)

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by white12211122 | 2015-07-03 00:52 | ドイツ留学の思い出